Psychotherapy

 

 心理療法( psychotherapy)とは、物理的・化学的手段に拠らず、教示・対話・訓練などを通して認知行動に変容をもたらすことで、精神疾患心身症心理的問題・行動の治療・援助・解決・予防、あるいは人々の精神的健康の保持・増進・教育を図るための援助理論・技法、およびその体系のことである。精神療法、心理セラピーとも呼ばれる。

 

概要

 心理療法は、「」「心理」「精神」を扱い、そこに一定の変容をもたらすことを図る。すなわち心理療法業務は、対象者の生命身体人生生活の根幹に関わるものであるため、行うに当たり高い専門性は元より厳しい倫理観も要求される。従って、心理療法を担当業務とする者は、精神科医心療内科医臨床心理士などの高度専門職業人であることが望まれる。

メンタルケア先進国である欧米諸国に比べ日本においては、制度面の遅れがあり、それゆえこれまでは心理カウンセリングや心理療法が日常的なものとして位置づけられてきづらかった。しかし、昭和期20世紀に比しての、精神疾患受療率増加、自殺者数増加、不登校児童生徒数増加、労働契約法施行による使用者安全配慮義務拡大などの様々な社会情勢から、精神科医心療内科医臨床心理士などとの心理カウンセリングや心理療法のため、専門家相談機関を訪れる人は増加傾向にある。また、教育機関においては、文部科学省によるスクールカウンセラー事業が定着するなど、今日では心理カウンセリングや心理療法が我々の日常に際したものとして認知されてきている。

 

歴史

 心理学においては「心理療法」、医学においては「精神療法」の呼称が通常用いられるが、両者の指すものは事実上同じものである。このような呼称の相違は、明治期以降に西洋学問を輸入した際、「psyche」という外国語に「心理」と「精神」という2通りの訳語が当てられ、それが心理学界と医学界に別々に定着したことに由来する。

 

心理カウンセリングとの対比

 心理療法は相談援助を通じ、クライエントの抱える精神疾患心身症心理的問題・行動、精神心理的状態などに良好な変容をもたらすことを図るための専門的援助理論技法を指すのに対し、心理カウンセリングは精神心理的な相談援助そのものを指す。従って、心理カウンセリングは心理療法を包含する概念と考えることができる。

 また、心理療法を行う際は、その目標や心理療法の形態、および心理職とクライエントとの関係性等の取り決めを、心理カウンセリングに比しても特に細やかに扱う。従って、学校内や企業内の相談室等、心理職に弾力的な関係性が求められる場合は、その心理職は「心理セラピスト」よりも「心理カウンセラー」と呼ばれることが多い。一方、医療機関大学附属心理相談機関、私設開業心理相談室などの専門家相談機関の場合は、上述の取り決めを継続させることが可能なため、当該機関の心理職はクライエントとの関わり方により「心理セラピスト」とも「心理カウンセラー」とも呼ばれる。

 

主な心理療法

 精神分析行動療法来談者中心療法の3つが、心理学史における心理療法の主要な源流とされている。現代では、この3大流派から派生した療法、またはそれ以外のルーツをもつ療法等、様々な理論・技法が存在する。